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【インタビュー】満天の湯 久下沼常務に聞く!「オフロ保安庁」がつなぐ温浴業界の未来《3/4》

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《前回の記事》
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インタビュー(2/4からの続き)

リスペクトの重要性


ーー 業者を呼んだから業者任せで終わりじゃなくて、現場に立ち会って興味を持って質問して吸収すると。久下沼さんはそうやってコツコツと知見を積み重ねているわけですね。


加えて言うと、それをすることで業者さんとの信頼関係も生まれるんですよ。

また、「ここの管理者は仕事をきちんと見ている」と思われるので、業者さんとは良い意味での緊張関係が生まれるんですよね。


ーー ちょろまかしたり、手を抜くことができなくなりますよね。


それもそうですし、取引っていうのはお互い真剣勝負で、尊重し合いながらやらなきゃいけないことだと思うんです。

お互いに向き合うことでそういう形になっていくので、とても大事な姿勢だと思います。


ーー 今後はそれをオフロ保安庁っていう組織体として、いろんな情報がもっともっと大きく動いていくよう考えておられるのですか?


設備に関していえば、ある程度勉強して構造がわかっていればわざわざ業者さんを呼ばずに済むことってざらにあるんです。

業者さんと話していると「いやこんな程度のことで呼ばれちゃってねぇ」「これあれば終わる話なのに」みたいなのをよく聞くんです。設備屋さんからすると、軽度の整備で人が割かれてしまうのは割に合わないことなんです。

それが、現場でトラブルの程度を判断できて「これは自分たちでやれば終わる話だ」となれば、お互いにとって良い話じゃないすか。店はすぐ復旧できてお金をかけなくて済むし、業者さんはもっと重要な仕事に人員をあてられるので。

それを実現するためには、やっぱり店舗である程度できることはやれるっていうふうな水準に持っていくことが必要で、それをサポートする団体が必要ですよね。

修繕をする久下沼常務


また、作業の意味や価値を知ると業者さんたちへのリスペクトが生まれるから、「この仕事をこんなタイミングで来てくれて、この金額でやってくれるんだ」っていうことに感謝が生まれるんです。

価値がわからないと、ただ「もっと安くならないかな」という考えになってしまいます。何でもかんでも値引こうとするようになっちゃう。それだと良い関係は構築できません。

値引きするにしても「この値段でいいから、連動する設備のこれも一緒にまとめてやれますかね?」など具体性のある話ができることが良い関係だと思うんですよね。


ーー 業者さんが提示している値段の内訳がちゃんと見えた上での交渉ってことですね。


基本的には業者さんは業者さんで作業に見合った数字を提示しているので、頭ごなしにその人の仕事を否定するような値引きの仕方はリスペクトに欠けることだと思います。

業者さんの言うことにも耳を傾けつつ、自分たちの見解を伝えるっていうことがちゃんとできれば、自然といい仕事になっていくと思います。

そのために、店舗と業者のそれぞれが勉強する機会と信頼関係をつくる場っていうのは必要だよなと思い、そういう場としてオフロ保安庁を機能させたいと思っています。

清掃をする久下沼常務①

全国サミット開催の背景


ーー 今回は「全国サミット」と銘打ってイベントをされましたが、それ以前は単発でセミナーを開くようなことをされていたんですか?


そうですね、展示会とかでセミナーを依頼される機会は何度かありました。

なお、今回全国サミットを開催した前身として、プロトタイプのイベントがあったんです。

元々おふろ元気プロジェクトの活動として、温浴施設で働く方向けの情報交換会は年に数回やっているんですね。エリアも、北海道・関東・東海・関西・中国地方と広くカバーしていて。

ただ、あくまでオフロ保安庁とは別の活動ですし、温浴施設の方たちだけで集まりで業者さんとの接点は作っていなかったんです。

業者さんが入ってしまうと物の売り合いみたいになって来ちゃうから、基本的には店舗の方だけの情報交換の場にするのが目的でした。

ポンプ分解実習


でも去年、札幌で初めて交流会にプラスして施設と業者さんとのマッチングをやることにしたんですよ。

普段の交流会は店舗の方だけで、決められたテーマで「こんなやり方したよ」とか、「うちちょっとこんな困ってるんだ」みたいな話を2,3時間ぐらいやるんですね。

それはそれで有益でしたが、交流だけで終わらずにもうちょっと広がりも欲しいなぁという思いを抱いていました。

また、施設の設備に関する展示会は東京ビッグサイトや幕張メッセなどの大箱で行われますが、そこに気軽に行って商材に触れられるのって都会に近い人に限られるんですよ。

北海道の方だと特に軽い気持ちでは行けないですし、そもそも会社がそんな旅費を出してくれないという問題もあります。

そうするとエリア的には北海道が一番不利な場所なので、北海道で温浴に特化した展示会をやってみたらニーズがあるんじゃないかなと思ったんです。

北海道での展示会


それで、お付き合いのある業者さんに絞って「お風呂屋さんが十数店舗ほど来る、テーブル一台サイズでの小さい展示会なんですが、ご参加頂けませんか?」と声をかけてみたんです。

実際どれだけ店舗の方が集まるかもわからず、商談としてどれだけ成立するかも未知数だったので、お試し価格でいかがでしょうという感じで。

そうしたら20社ほどの業者さんが手を挙げて下さったんです。設備屋さんに加えて、薬剤や消耗品や物販を扱う会社など。

ただ、それだけではコンテンツが弱いなと思って、温浴コンサルをされているアクトパスの望月さんのセミナーもくっつけて、普段の交流会には参加しない方たちにも来てもらえるようにしました。

セミナーで学びが得られるし、店舗の方との横のつながりもできる。加えて業者さんたちの商材も見れるという作りにしたんです。

北海道での交流会


それで実際にやってみたら、すごく反応が良かったんです。

店舗の方からは、いっぺんに色んな商材に触れる機会がなかったから効率が良かったとか、分野が絞られているから必要な情報を沢山得られたなどと言ってもらえました。

業者さんからは、「北海道で営業をかけようと思うと3,4日かけて車で一軒ずつ回らなければならないのが、何十店舗とまとめてお話ができて非常に効率が良かった」と喜んでもらえました。

「お試し価格の出展料も、もっと高くても全然元が取れます」って言ってもらえたんです。

もちろん北海道だから成立したという面はありますが、やっぱり双方にそういうニーズがあるんだなというのを認識しましたね。

オフロ保安庁を運営していく中でもきっとそういうコンパクトな展示会のニーズはあると思ったので、関東でも再現してみようというのが今回の試みにつながりました。

また、自分自身が20年近くやってきた中でたくさんのご縁に恵まれて、お世話になった方々のお手伝いができればという想いはずっと持っているので、年一回の頻度でそういうシンボリックなイベントをやっていきたいなとも考えました。

第一回オフロ保安庁全国サミット

サミット以外の活動


また今年、オフロ保安庁を組織化してから小規模な活動も結構やったんです。

セミナーだけでなく、衛生管理の座学を初級編と中級編をやったり、ポンプ工場に行って実地研修もしました。今後は配管についての研修も行う予定です。

実際自分がやるかどうかは別として、どういう仕組みなのかを理論と体験の両面で得られる機会は必要ですからね。


ーー 両面をきちんと知ることは普段の運営にも生きますよね。


先月、塩素のポンプの分解講習をやったんですね。そこに弊社の店長と一般社員を連れていったんです。

店長は普段からその作業をやってるから難なくこなしていましたが、一般社員は普段やらないことなので苦戦していました。

そうやって作業の大変さを知ると、支配人や店長がやってる仕事が「あ、こういうことをやってたんだ」とわかって、相手との関わり方が変わってくるんですよね。

そういう意味でも、他の社員がやってる仕事を理解することってとても大事ですよね。これは設備に限った話ではなく。

また、自分が一回実習をしたことで、今後もし障害が起きたとしても「自分で触ってみよう」っていうハードルが一気に下がりますよね。「この前やったあれだよな」とイメージができれば、トライするという選択肢が生まれるんです。

うまくいくかは別にしても、そのモチベーションになれるかどうかっていうのはすごく大きな違いだと思います。

少なくとも弊社では確実に有益な実習だったので、そういう経験をより多くの施設の方々にしてほしいと思います。

本当は、店舗はそういう教育に投資していくべきなんです。人材不足で現場を空けるだけの時間を作りにくいとか事情があるかもしれませんが、それをしないとやっぱり人材が育たずジリ貧になってしまうので。


ーー 努力してボトムアップさせないと、いつまで経っても余力は生まれてこないですよね。


そうそう、育成を後回しにすると結局ずっと故障に追われっぱなしになっちゃうんですよ。

水回り研修

サミットの手ごたえ


ーー さて、実際にサミットをやってみたわけですが、感触はどうでしたか?僕は撮影係として現場にいましたが、盛んに交流が生まれているように映りました。


マッチング面では概ね喜んで頂けたかなと思います。展示スペースでの交流だけでなく、懇親会でも施設と業者さんが意見交換できたと思うので。

また、講演については今回2つ開催しましたが、出ていただいたお二方のお話はぜひみんなに知ってほしい情報だったんです。

正直ちょっと初回から本気出しすぎちゃったかなとは思います(笑) 自分でいうのも何ですが、なかなかあの分野をブッキングする人は多くないと思うんです。

一つめの新道社長による大丸別荘さんのレジオネラ事故の話は、講師の新道社長が別のとこで講演されてるのを聞いてオファーさせて頂いたのですが、メディアで報じない部分を含め、決して他人事ではないぞと知る上ではすごく有益な話でした。

実際、改善のために大丸別荘さんは相当な施策をされているんです。そこの取り組みは、やっぱり一回でも事故を起こしたら徹底的にやらなきゃいけないんだっていう危機感を持たなきゃいけないんですよね。

元々僕からは新道社長しかオファーしてなかったんですが、大丸別荘の外木場社長が来られて当事者として語って下さったのも、より切実さが伝わってすごく良かったです。

新道社長がお声かけ下さったわけですが、直接来られて話して下さるっていう姿勢にはとても誠実さを感じました。しっかり前を向いて取り組んでおられるんだなと。

やっぱり経験者だからこそわかる痛みってあるじゃないですか。それを発信する価値を理解しているからこそ外木場社長は自らお越し下さったと思うので、その思想は僕とも近しいものを感じました。とてもありがたかったです。

二つめの保険の付き合い方についてのお話も、それを知ってるか知らないかって全然違う部分でありながら圧倒的に知らない方が多い分野なので、とても身になる内容でした。

参加者さんの反応を聞いてると、意外と業者さんの方がこういう内容を喜んで頂けていましたね。普段ではまず入ってこない情報だったということで。

全国サミットの裏方


今回のサミットは、総じて喜んでいただけたかなと思うので、運営の部分をブラッシュアップしていけば、今後はもっと規模を大きくしていけると思います。

また、支配人クラスだけではなくもっと現場寄りの方たちの参加も増やしたいですね。

そういう方が支配人と一緒に来ることによって、支配人の仕事を知る機会になりますし、他店舗の方や業者さんとも交流すれば普段だと触れない情報をたくさん浴びることができますから。

そんな風に保安庁の活動を拡大していけたら、次世代の支配人を育成していく場にもなるのかなと思います。

全国サミットの交流会

(4/4につづく)


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