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【インタビュー】独立した熱波師・井上勝正が語る!根源的欲求と対峙し続ける覚悟【後編】

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▼前回までの記事
【前編】
zakkurisauna.hateblo.jp

【中編】
zakkurisauna.hateblo.jp

インタビュー(中編からのつづき)

もっと日本のサウナを愛して欲しいし、誇りを持って欲しい



何でこんなことを言うかというと、僕は日本のサウナが大好きなんです。極論、日本のサウナがあれば充分だし、それを良くしていきたいだけなんです。

これからも良いサウナがたくさん生まれて欲しいし、多くの施設が存続し続けて欲しいです。

そういう根源的なところから考えると、僕にとってACJっていうのは目指さなくても良いものなんです。あくまで僕にとっては、ですよ。

また、ちょっと別の視点になりますが、アウフグースで使う機会の多いキューゲル(アウフグース用の雪玉)ですが、これは多用するべきではないと思っています。なぜならサウナヒーターのことを考えたらベストとは言えないからです。

ヒーターが急速冷却されると大きな負荷がかかるので故障のリスクが高まります。さらに言えばサウナストーンや、放熱器の中心部にあるエレメント(熱源)が破損する可能性も高まります

ちなみに、僕が熱波をやるときは施設にお湯を用意してもらってヒーターやストーンの負担を軽減させています。

僕はそういう仕組みも理解した上でパフォーマンスをしていく必要があると思うんです。それがわかれば、どういうタイミングで何をすればいいかが自然とわかるはずです。

日本にショーアウフグースが本格輸入されてまだ時間が経っていないので最初はヨーロッパの模倣になるのも当然ですが、そこで留まらずにサウナの理論を学ぶ文化も根づいていってもらえたらなと思います。

その積み重ねが自然と日本のアウフグースの独自性を作っていくんじゃないでしょうか。少なくとも単純に雰囲気を「和」テイストにするだけでは日本の独自性は生まれないでしょう。


ーー 僕は最近いくつかの有名な施設でアウフグースを受けましたが、どこもみんなJ-POPを3曲ほどかけながら似たようなスタイルでタオルを振るという内容でした。正直かなり画一的だなぁと感じてしまいました。


音楽を流してタオルを振る。今はそれがいわゆる「ジャパニーズアウフグース」の典型になってきていますよね。

でもそこで大事なのは「何のために日本のサウナでアウフグースをするのか」という本質を自分なりに解釈した上で、流す曲や衣装、扇ぎ方などを組み立てることだと思います。

皆さんにはもっと日本のサウナを愛して欲しいし、もっと誇りを持ってほしいです。そういう精神が浸透していけば、ジャパニーズアウフグースは今よりもっと面白くなるはずです。

ぜひ海外の人たちにジャパニーズアウフグースを学びに来させるくらいの気概で取り組んでもらいたいなと思います。


お父さんの人間としての得体の知れなさを楽しんでいます(tamamix)



(※ここから奥様・tamamixさんが合流)


ーー tamamixさんに質問ですが、夫としての井上さんはどのような姿なんですか?


(tamamix:以下、tama) お父さん(井上さん)はサウナ以外は何もできない人ですね(笑) でも家事はよく手伝ってくれます。


僕は最近味噌汁を作るようになりましたが、tamamixの味には遠く及ばないですね。今まで食事はたんぱく質・糖質・ビタミンといった栄養の摂取手段としてしか見ていなかったんですが、その意識が変わってきました。

味噌汁も出汁をとってから作るっていうことを教えてもらって初めて、「あ、出汁があると味噌汁って美味しいんだなぁ」と感じましたね。


ーー tamamixさんは料理がお好きなイメージですが、それだとお二人の食の好みって結構違うんじゃないですか?


(tama) はい、全然違います。私はスパイシーだったりアジアンな料理がすごく好きなんですけど、お父さんはそういう個性的な味付けには無関心なんです。もうちょっと興味を示してくれると嬉しいんですけど。

だから食については二人で分かち合うことを諦めています。でも他のことでいえば、お父さんは洗濯がすごく得意ですよ。


僕はすごくマメに洗濯しますからね。


ーー お二人で一緒に過ごす時間は何をされているんですか?


(tama) たまに映画を観たりすることはありますが、それ以外は趣味が全然合わないんですよね(笑)


でも僕はtamamixと一緒にご飯食べているだけで楽しいですよ。彼女が美味しいものを食べて嬉しそうにしているのを見ると嬉しくなりますね。


(tama) 私はお父さんの人間としての得体の知れなさを楽しんでいます。サウナや自分の興味・関心事についてはすごく熱心に調べるし考えるんですけど、それ以外のものに対しては全く何も考えないんですよ。その振れ幅が極端ですごいなーって思います。

あとお父さんの特性として、その場その場のことはできても、計画性をもって順序立てて物事を進めていくことがすごく苦手なんです。

でも私がお願いをすれば嫌な顔せずに何でもやってくれるので、そういうものなんだなって理解して上手く付き合っています。


ーー 言えばやってくれるというのはありがたいですね。


(tama) とか言いつつ、たまにイライラしてしまうこともあるんですけどね(笑)

独立のことに関しても、期限内にやらなきゃいけないことが沢山あったんですけど、「ちゃんとやってる?」って聞くと「まだやってない」っていうんですよ。

「どうしてやらないの?」って聞くと、「何をやったらいいかわからないし、そもそも何がわかってないか自分でもよくわかっていない」ってゴネるんです。

私自身も自分の仕事が忙しい中での独立準備だったので、自分事として向き合ってくれない姿勢にはちょっと苛立ちましたね。

でも私は寝れば忘れちゃう性格で、怒りを持ち越すことはないし割り切ることも出来るタイプなので上手くやれているんだと思います。

普通って一番大変なんだよ



得意・不得意の話で思うところがあって、世の中では「普通そうでしょう」っていう言葉をよく聞きますけど、何が普通かなんて定義できないじゃないですか。

結局サウナをどう認識するかと一緒で、普通っていうのは人それぞれがそれぞれに決めるものなんですよ。

例えば「一人暮らしをしていたらゴミ出しをするのは普通」と思う人が多いかもしれませんが、仮にゴミが溜まって悪臭がしても気にならないという人がいたら、その人にとってはゴミ出しは普通の行為じゃないんですよ。

少なくともパーソナルな空間や思考の範ちゅうにおいては、普通を決めるのは自分自身です。


ーー ところで、最近は髪を伸ばしておられますが、なにかきっかけがあったんですか?


(tama) 家では私がお父さんの散髪をしているんですけど、そもそも私は最初からお父さんに坊主はあまり似合っていないと思っていたんです。プロレスラー時代のように髪がある方が良いなと。

それで、坊主にしている理由を聞いたら「簡単だからそうしてるだけ」と言うので、「私が手入れするから伸ばしてみよう」と提案したんです。そうしたら伸ばしてくれるようになりました。


そしたら、会う人会う人に「髪伸ばした方が良いですね」って言われるようになりましたね。範馬勇次郎の髪型を目指してこれからも伸ばし続けます


(インタビュー・文:やのしん)


《終》

【おまけ】 こぼれ話 ~サウナは女性にこそ必要~


これからサウナが必要になるのは特に女性だと思います。女性は男性よりも体内に水分を多く持っています。日常の中の汗や尿では排出しきれない余分な水分を排出するために、サウナは必要だと僕は考えますね。

例えば水分が適切に排出されないとどういう不具合があるか、排出されることでどういう改善が見込まれるのかなど、きちんと説明して認知度をあげていかないといけないですね。

そういうアドバイスができる人も必要だし、安全にサウナ浴ができるようアドバイスできる人も増やす必要があります。特にサウナは正しい理解が広がりきらず、効果・効能を誤解している人も多いですからね。


ーー ただ、健康面の効果を訴求するにしても、そもそも女性は温浴施設に行くということ自体が高いハードルになってしまっていますよね。


今以上に色んなところにサウナが出来て「近所のサウナに行ってすっぴんで帰れる」みたいな環境にならないといけませんね。


(tama) コインシャワーみたいに、「コインサウナ」のようなカジュアルな施設があってくれたら嬉しいですね。


プロフィール

井上勝正(いのうえ かつまさ)
本名:井上 富文(いのうえ ひろふみ)
1970年〈昭和45年〉1月7日 生まれ。
大阪府生野区出身。
元プロレスラー、熱波師、JSNA熱波師検定講師。
ドイツサウナ協会公認熱波師。
ゴールドエクスペリエンスレクイエム株式会社 代表取締役社長。