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”見習い女性熱波師” 宮川はなこさんに聞く

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はじめに

我々のサウナ体験をよりディープなものにしてくれるタオルの魔術師「熱波師」。コアなサウナーの方ともなると、ごひいきの熱波師が一人、二人いるものだろう。
しかし男性熱波師に比べると、女性熱波師はまだまだ数少ない貴重な存在だ。

今回は2019年12月から横浜・鶴見の「おふろの国」で毎週土曜日に、見習い熱波師として活動している宮川はなこさんへお話を伺った。

平日、会社員として働く宮川さんは、サウナを知って半年後に熱波師としてスピードデビューした。何がきっかけで熱波師の世界に足を踏み入れたのだろうか。

宮川さんのサウナとの出会いから、おふろの国での修行の日々、今後のサウナ界に対する思いを伺った。

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インタビュー

初めてのサウナで強烈にととのった!

──この頃は女性サウナーも増えてきましたが、まず宮川さんとサウナとの出会いを教えてください。

「サウナを認識して、ハマり出したのは2019年6月ですね。
はじめてサウナに入ったのは『クアビオ』というファスティング(*一定期間断食することで消化機能を休息させる健康方法)のできる草津の温泉施設です。
そこに源泉掛け流しの温泉と、サウナがありました。

滞在中は特にやることがないので旅行の計画を立てるつもりでしたが、断食中で頭がぼーっとするので、ガイドブックも読めなくなっちゃって(笑)」


そこで初めてサウナに入った宮川さん。
当時、まんきつ先生の漫画『湯遊ワンダーランド』を読んでいたため、「サウナ・水風呂・外気浴」の入浴方法は知っていたのだそう。


「初めて入った水風呂は冷たくて、心臓が止まるんじゃないかと思ったんですけど、繰り返すうちにだんだん楽しくなってきて、ハイテンションになりました。最終的に、水風呂とサウナを10往復ぐらいしました(笑)」

──10往復!?初回でですか!?

「そう。何かに取り憑かれたように(笑)。それから外気浴で腰掛けて、はっと景色を見たら草津の森が宇宙みたいにキラキラして綺麗に見えたんです
あの時は友人と二人してととのってましたね。

その時はそれがととのいだという感覚はありませんでしたが、東京に帰ってから改めて『湯遊ワンダーランド』や『サ道』を読んで、『あれがととのいだったのかも』と点と点がつながっていきました」

「井上さんの熱波に感動して『熱波師検定』にその場で申し込みました」

その後すっかりサウナにはまった宮川さん。偶然、テレビでおふろの国のプロ熱波師・井上勝正氏の「108熱波」(*井上氏がタオルを108回振るスタイルの熱波)を目撃したことをきっかけに、おふろの国が主催する「大サウナ博」へも足を運んだ。そのイベントを体験したことが、宮川さんが熱波師になる大きなきっかけとなった。

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関連リンク:
zakkurisauna.hateblo.jp


「『大サウナ博』は初めて経験することばかりで、そこに惹かれました。なによりも、ああいうニッチなイベントを躊躇や照れもなく、本気でやってる姿にとても感動しました

イベント終了後に、井上さんと林さん(おふろの国・店長)に『私もサウナに関わりたい』ということを伝えたら、その翌々週に実施される『熱波師検定』の話を聞かせてくれました。
私でも熱波師になれるということに胸が躍って、その場で申し込みました

──「サウナに関わりたい」という話をしたら「熱波師になろう」という話を出されたわけですが、疑問や戸惑いはなかったですか?

「クアビオで一緒にサウナにハマった親友がそばにいて『絶対やるべき!』と言ってくれたんです。井上さんの熱波パフォーマンスへの強烈な感動もあったので、おじけづいたり悩んだりする暇もなく受験することになっていました」

男湯と女湯は別世界

2019年12月1日に熱波師検定を受験した宮川さんは、翌週から「おふろの国」で熱波師見習いとしてデビューした。

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──初めて一人で熱波をした時のことを聞かせてください。

「同じ施設内でも、熱波に対する認知度が男湯と女湯で大きく違うことに驚きました。
最初は常連さんからの反応はシーンとしたもので、まず『熱波師って何?いつものスタッフさんと何が違うの?』と思われていました。

その後も緊張してうまく喋れずにいたら『早く(フロントに伝えるとポイントがたまる)合言葉を教えてよ』と言われてしまったり(笑)」


熱波師としてはテクニックを見せたい「風」についても、常連客からは「いつもどおりにやってくれればいい」と言われてしまい、熱波に対する意識が大きく違うことにとても驚いたという。


「サウナが日常化されてる女性は少ないと感じています。女性にとって日々通うには着替えや、サウナのあとのメイクをどうするかが面倒くさいんです。
男性と違って365日、いつでも行けるわけでもないですし、そもそも男性と女性ではサウナに対する意識が違うことにも気付きました。だから、緊張しすぎないで堂々とやろうと考え方を変えました

──女湯の熱波に対する期待値も、男湯と比べて高いわけではないと。

「文句を言われない代わりに、褒められもしないですね。それよりも、堂々としていないことが目につくのか、常連さんから『あんたの顔真っ赤だよ。大丈夫かい?』と言われたりします。毎週が反省の連続でした」

──井上さんの熱波スタイルといえば「賛美歌(*「ネーネーネー」「パーパーパー」のコール&レスポンス)」と「108熱波」ですが、宮川さんも井上スタイルを取り入れてますか?

「お客さんのニーズも違うので、井上さんと全く同じことはできませんが、長めの口上は取り入れています

井上さんの長い口上は、お客さんの体調を見たり、たくさん汗をかいてもらうための計算なんです。女性はサウナ自体に慣れていない方が多いので、口上を長くしても汗をかいていない方が散見されます。そういう方には『汗をかいてない人は体内の水分が足りていないので、水を飲んでください』と説明してます。

私は水分補給の大切さや、熱波の効果をしっかり説明して、熱波の具合をお客さんとコミュニケーションを取りながら調整するスタイルでやっています。そのやり方で今のところ女湯のお客さんに喜んでもらえるし、私の個性にもなるのかなと思っています」

「井上さんと林さんからは大人の優しさを感じます」

──宮川さんは数少ない施設付きの女性熱波師ですが、そのことについて「おふろの国」から「応援してもらっているな!」と感じることはありますか?

「デビュー初日について言えば、施設からの大々的なバックアップはありませんでした。井上さんのアシスタントをした時も『今日から一緒に熱波をする宮川です!よろしく!』というような紹介はなくて、『見習いです』というクールな紹介しかなかったです。

でもそれは、私に全く期待していないからではなくて、もし私が辞めたくなっても辞めやすいように配慮してくださったからだと思っています。

井上さんと林さんの大人の優しさですね。会社員との兼ね合いもあるので、やる気だけで続けられるものではないことを理解して下さってるのだと思います」

──熱波パフォーマンスについてのアドバイスはありますか?

「井上さんからは、女湯の熱波が終わった後に『どうだった?』と聞かれます。

『今日はお客さんが二桁いきました』と伝えると『安定してないと意味がないよ』と言いつつも『来週も二桁いくといいね。汗が冷えて風邪をひくから早く着替えて』と励ましてくれます」

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(写真左が井上勝正氏)

施設にとってよい熱波師とは?

井上氏の刺激的なパフォーマンスに惹かれて熱波師になった宮川さん。おふろの国でデビューする前に、おふろの国店長・林さんへ「よい熱波師とはなにか」と本質的な質問をしたそうだ。


「『シンプルだよ。集客力があるのが良い熱波師だよ』と言われました。
『いい風や、人としての魅力も熱波師の個性だけど、お客さんを集めてきてこそだよ』とズバッと。

だから検定からデビューまでの1週間に、できるかぎり準備をしようと思いました。
熱波の技術的な向上についてはできることが限られてしまうので、広告関係の仕事をしていることを生かして、なにかしら広報活動をしようと思いました。

『女性の熱波師は珍しいんだよ』と話題化するために知り合いのツテを頼って、ラジオのお出かけ情報に取り上げてもらったり、当日はWEBサイトの取材にも来てもらいました。
友人の力を借りて、やれることはや全力でやりました。でも勢いが凄すぎたのか、林さんは笑ってましたね(笑)」

──そういえばTwitterでこういうイラストを載せてらっしゃいましたよね。


体験を伝えることも熱波師としての宣伝だと思っています。

でも、SNSで発信力を身に付けるには裏付けが必要なんですよね。

だからプロフィールにも『熱波師見習い』と入れたりして、サウナの人として裏付けさせています」

──熱波師としてTwitterで発信してる中で、なにか感じることはありますか?

ライトサウナーからヘビーサウナーに移行している人が日増しに増えてますね
今はサウナブームで、世間のタイミング的にサウナーが増える好機だと思うんですが、上げ止まりはどこかで必ずあると思うんです。
今いかにヘビーサウナーを増やせるか、ここでいかに集客して、施設に貢献できるかも意識しています。

その上で自分もツイートしているので、『熱波のイベントがあれば行きたい!』という方にフォローしてもらえればいいなと思ってます」

スタイルにとらわれず、お客さんの満足度を高めるパフォーマンスをしたい

──熱波師になって2ヶ月ほど経ちましたが、今後の目標を教えてください。

来客数を増やすことと、お客さんの満足度をあげることですね!近隣住民や熱波に興味のある方に来てもらって、『サウナって癖になっちゃうな』と思ってもらえるようにしたいです。そうすることで、熱波師としての扉を開いてくれたおふろの国に貢献したいです。

また、サウナというのはいわば『プチ湯治』なんです。汗をかいて水風呂に入って、スマホや家庭や会社の肩書きからも解放される…。実際私自信が、サウナを暮らしに取り入れたことで体も心も楽になりました。ぜひ一人でも多くの女性にサウナを体験してみて欲しいなと思います。

余談ですけど、『熱波師としてのオリジナリティーを出すために、熱波にスタイルはあったのほうが良いですか?』と井上さんに聞いたことがあるんです。
そうしたら井上さんは、『僕は意識的にスタイルを作ることはしなかった。お客さんに来てもらうために工夫し続けた結果が今の形になっているだけだ』と答えたんです。

井上さんは本当にお客さんの反応を見てますね。さすが元・プロレスラーです。徹底してお客さんを喜ばせることを重要視しているんです。それを10年継続してきたからこそ、周りからは確固たるスタイルがあるように見えているんです。
だから私もスタイルにとらわれずに、お客さんの満足度にフォーカスしていきます

女性の熱波師に必要なことは?

──現在は、男性熱波師の数に比べたら女性熱波師が圧倒的に少ないので、女性が熱波を体験する機会が少ないですよね。
まずは女性サウナーが増えるきっかけとして、女性熱波師が増えることがそのひとつかなと思うんです。
つまりは女性熱波師が増えたら良いなということなのですが、女性が熱波師になるために必要なことはどんなことでしょうか?

「お客さまの体調を預かるので、温浴に関する知識と責任感が必要ですが、まずは自分の体調管理ですね。熱波をした後の体力の消耗は激しいので、日頃から良いコンディションを維持する努力が必要です。

つまりその覚悟が出来れば、誰にでも始められると思います。

継続出来るかどうかについては正直やってみないと分からないところですが、そこは最初はあまり心配しすぎなくて良いと思います。
熱波が大変なことは施設側も十分わかっていることですから。

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適性の面でいえば、人前に立つことに慣れている方は向いていますね。ミュージシャンや芸人さん、あるいはプレゼンする機会が多い方とか。
でも、そういうことに不慣れだった私でも見習いとしてやっているうちに慣れました。そこは継続することや、慣れで補えるものだと思います。

だから、もし熱波師に興味があれば、ぜひ熱波のある施設に問い合わせてみて欲しいです。

多くの施設で女性熱波師は不足しているので、ニーズはきっとあります」

──熱波師になってよかったことはありますか?

主役になれることです!人生で主役になれることはそんなにないので。
熱波を送ることでお客さんに喜んでもらえるなんて、毎回ソロヴォーカルを歌ってるみたいな感じですね。自分が頑張って結果を出せば、自分も楽しいしお客さんも嬉しい。一石二鳥ですよ。

あとはまぁ、サウナの外の世界で溜めちゃったやりきれなさも、100°C近いサウナ室で限界近くまでタオルを振ればどうでもよくなっちゃいます!」

おわりに

「毎週がトライ&エラーです」と照れ臭そうに語っていた宮川さん。
今後のサウナ界に熱い風を吹き込んでくれそうだ。


(インタビュー/やのしん 記事・構成/東ゆか)

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